東京地方裁判所 昭和43年(ワ)7055号 判決
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〔判決理由〕〔第一、争いない事実〕
一、傷害自動車事故発生
とき 昭和四一年五月二六日午後七時四〇分頃
ところ 東京都港区新橋二丁目一八番地先路上(新橋駅東口広場)
事故車 被告所有の練五あ八五二三号
右運転者 被告方従業員稲葉静男、昭和一五年二月二六日生
受傷者 原告(足踏自転車運転中)大正三年一月二六日生
態様 東進右折しようとした事故車と北進の原告車と出会頭の衝突をし、ために原告は受傷した。
〔第五 争点に対する判断〕
二、損害
原告主張のうち左の限度で、本件事故による損害発生が認められる。
(一) 傷害の内容
頭部外傷。顔面および左第一指擦過創。頭部、左上腕両膊部、左足挫傷。
(二) 損害の数額
1 医療費 金一七二、五〇〇円
被告支払の治療費一七万円のほか、昭和四一年七月二一日から七月三〇日まで中村接骨院に通院して二、五〇〇円を要した。
2 逸失利益
金二四〇、〇〇〇円
原告は大工として受傷当時少なくとも平均六万円を下らない月収があつた。そして本件受傷による通院は右七月末で終了しているが、受傷当時五二才で炎夏にかかつてのことでもあり、受傷から四ケ月間は休養のため稼動できず、その間右平均額の収入を失つた。
3 慰謝料 金三〇〇、〇〇〇円
入院四五日、通院二〇日をふくめ、前後四ケ月の休養を要したものと思われる治療経過、年令、右症状、また左眼眉部の傷痕を考慮した。
なお原告は右のほか「頸椎部むちうち症候群、頸髄不全損傷」が本件事故による傷害であるとしてこれらによる昭和四一年一二月二八日以降の入、通院治療費などの損害を主張し、右症状がその頃発現したこと、またその主張の入、通院医療費の出費も証拠上認められるところである。
しかしながら、左の諸点も認められるので、にわかに右症状が本件受傷によるものとは認めがたく、証明不十分により、本件事故と因果関係ある損害とはなし得ないところである。
すなわち<証拠>を綜合すると、左のとおりの事実が認められる。
原告の右に本件事故によるものと認定した症状による治療は、同年七月末に終了し、その後同年一二月二七日まで約四ケ月間何ら受診、治療を受けていない。そしてその間自転車にも乗つていた。本件事故は足踏自転車搭乗中、左側から事故車に衝突され、右側に転倒したものであるが、頸髄部損傷を思わせる衝撃は一応認められない。原告は被害者請求により強制保険金を受領したのは頸椎むちうち症で入院した一二月末頃と時を同じくするが、これについてはむちうち症についての資料・算定はふくまれていない。またむちうち症による治療を受けるについては事故後月余入院治療を受けた主治医淡路病院による受診を経ていない。原告は当時五二才で頸椎の径年性変化が十分考えられるところである。そして頸椎に関する症状が本件事故と因果関係あることを証明する診断書などの資料が存在しない。
そうすると本件事故による損害は右冒頭認定の範囲内の合計金七一二、五〇〇円となる。(舟本信光)